2026.07.03

ジェンダー格差を是正する「男性のスポンサーシップ」という仕事

先日、ある法人のDEI推進の責任者にヒアリングをする案件があった。

DEI推進の責任者といえば当事者として女性が抜擢されやすいポジションであり、女性活躍の象徴になってしまう企業もある。
しかし その法人は男性であったため、私は不躾ながら「DEI推進の責任者を男性が担うメリット」について聞いた。

すると女性管理職を増やす話するときに、声として挙がる「男性への逆差別」に対して、男性が説明することでリーダー層へ
納得感を得てもらいやすかもしれないとおっしゃってくれた。 女性だと“当事者の主張”として聞かれてしまうことがあるとも。

これは感覚論の話ではない。
社会心理学では、人は自分と同じ属性の人(性別、年齢、役職、経験など)に対して、無意識に信頼や理解を示しやすいことが知られている。
「イン・グループ・バイアス(内集団ひいき)」と呼ばれる現象だ。

例えば、

  • 同じ性別

  • 同じ管理職層

  • 同じキャリアを歩んできた人

こうした「自分と似ている人」の言葉は、内容が同じであっても、より合理的で、より現実的で、より“自分ごと”として理解されやすい

つまり、「男性は男性の言うことを聞く」というと乱暴な表現になってしまうが、学術的に言い換えるなら、
人は自分が所属している集団(男性管理職という集団)から発せられるメッセージを、抵抗感なく受け取りやすいということになる。

しかし、私がここで強調したいのは男性のスポンサーシップの役割だ。

女性活躍において本当に必要なのは、「頑張っている女性個人」の主張ではなく、 その人の価値や可能性を組織の中で翻訳し、広め、意思決定の場に乗せていく人である。

これがメンターではなく、スポンサーと呼ばれる所以だ。

男性管理職がスポンサーになることで、

  • 「この人は能力がある」という評価が、管理職男性の共通言語に乗る

  • 昇進や抜擢の議論の場で、本人がいなくても名前が挙がる

  • 「特別扱い」ではなく「組織にとって合理的な判断」として説明できる

といった効果が生まれる。

前述の責任者の男性は、最後にこうも言っていた。

「数値目標達成や維持のために、各部門の登用予定候補者を事前に把握するためにも日頃の関係性によって、相談に乗ってもらいやすくなる」とも。

男性の立場にいる責任者が、ジェンダー格差の意義をご自身の言葉で語ることには、想像以上の意味・意義がある。
影響力を持つ側にいる人が、マイノリティのサポートをする。
それこそが、DEI推進の本質なのかもしれない。